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9. じめじめざわざわ
Summary
紡錘体形成チェックポイントの恒常性が mRNA のコドン使用頻度によって担保されることを報告した論文を紹介しました。
Starring
エビ、イシ
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湿度を感知する仕組み … 収録後に調べてみると、
Drosophila
が湿度を感知する仕組み
の論文を発見しました。ヒトなどを含めてあまりよくわかっていない模様。関係ないですが、以前読んだ
蚊が温度を感知する仕組みを報告した論文
を思い出しました。
サウナ
イスタンブールの湿度 … イスタンブールは地中海性気候 (Csa) と温暖湿潤気候 (Cfa) の境界に位置する。
「同じ温度で違う湿度でのヒトの表面付近の温度分布」…
ダイキンのうるるとさららZEASの紹介ページ
にまさにそんなサーモカメラ写真があった(ただし2枚の写真が対照実験ではなく経時変化のイメージングの可能性あり)。
Esposito, et al.
bioRxiv
(2021)
… 今回紹介した論文。オープンアクセス。
Hauf lab
紡錘体形成チェックポイント (Spindle assemby checkpoint; SAC)
攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX
異数性 (aneuploidy) … 細胞が通常とは異なる数の染色体を持つこと。たとえば、ヒト表皮のケラチノサイトでは全く異数性が見られないのに対して、肝臓では 5% 程度の細胞で異数性が見られることが知られている (
Santaguida and Amon,
Nature Review Molecular Cell Biology
2015
)。
Mad2
… Mitotic arrest deficient 2 タンパク質。
Waters, et al.
Journal of Cell Biology
(1998)
… PtK1 細胞において、整列していない染色体に Mad2 が局在する様子を観察した (Figure 4)。オープンアクセス。
Heinrich et al.
Nature Cell Biology
(2013)
… 今回紹介した論文のベースとなった、著者らの先行研究。残念ながら、オープンアクアセスではない。本論文において、紡錘体形成チェックポイントのタンパク質ノイズが低いことが報告された。細胞分裂を正しく行うのに必須の APC/C 複合体の構成因子のタンパク質ノイズが高いのが興味深い。
ノイズ … 定量生物学で使われる用語で、遺伝子型も生育環境も同じ細胞間で見られるバラツキのこと。
Chan et al.
Elife
(2018)
… 非侵襲的に mRNA の半減期を解析できる手法を報告した論文。ウラシルを硫黄置換した 4-チオウラシル (4-TU)を t=0 で細胞の培養液に加えると、t≥0 で新しく形成された mRNA にはウラシルの代わりに 4-TU が取り込まれる。ここでチオール基 (R-SH) にビオチンを付加できる MTSEA-biotin を用いることで、t≥0 で形成された mRNA をラベルすることができる。今回紹介する論文では、ビオチン付加された mRNA を選択的に取り除くことで t<0 に存在していた mRNA の半減期を測定した。
コドン使用頻度 (codon usage) … 一つのアミノ酸をコードするコドンは複数ある場合があり、これらは同義コドンと呼ばれる。同義コドン間の使用頻度は生物種によって異なることが知られている。たとえば、あるアミノ酸をコードする2つのコドン1と2の頻度の種間比較で、種Aでよく使われるコドン1が種Bではあまり使われず、種Bでよく使われるコドン2が種Aではあまり使われない、というようなことがある。
Codon stabilization coefficiency (CSC) の計算方法がわからない …
Presynak, et al.
Cell
(2015)
によると、全 mRNA を対象として各コドンが出現する頻度と、(おそらく) 各コドンを含む mRNA の総体の半減期のピアソン相関係数を計算している。この論文の結論として、同義コドンの使われ方によって mRNA の安定性が決まることが主張されており、今回紹介した論文の著者らはこの点に着目したようだ。
コドンの最適度はmRNAの安定性を決める主要な要因である。
… 岡山大学の守屋先生のブログ記事。この記事によると、同義コドンによって生命現象を説明しようとする研究は古くからあったようだ。
Editorial notes
低温かつ低湿度な環境に移り住みたい (エビ)
今年も夏らしいことできませんでした…(イシ)
収録日: 2021.08.14
編集: エビ